iPadを鏡にかざすと、そこに本来写っているはずの”自分”が蜃気楼の如く消えて居なくなる。
展示とiPadによるARアプリケーションを組み合わせたインスタレーション作品。目の前にある鏡には確かに自分が映っているが、iPadをかざすとそこからは自身の姿が消えて空間と”自分という感覚”だけが残る。私はここにいるのか?そもそも鏡に映る人物は私なのか?今感じている”自分”こそが”確かな私”、そんな自分の不確かさを考える作品。
鏡を見る時、人は必ず自分自身のことを考えているだろう。と同時に、自分のことを考えている自分の姿が鏡に映っていて、これは入れ子構造のようである。そういった鏡が発明される前まで見えなかった自分という姿を確認できる鏡は≪最古のAR≫だと私は考えている。
本作はルネ・マグリットの不許複製という作品に強い影響を受けている。また、デカルトが方法的懐疑でそうしたように、鏡という存在、そこに映る空間と自分の存在を疑ったときやはり彼が出した結論と同じように「我思う、故に我あり」がこの作品を通して導けた。
皆さんにも本作を通して、いつもの鏡を見ているときに感じる”自分”とは違う”自分”を感じていただきたい。
多摩美大メディア芸術3年生有志学外展 2021 出展作品
制作:2020年12月/使用ソフト:Unity,Xcode
制作:伊藤銀児